【いのちの懸け橋】(上)医療技術、ベトナムへ 子供救う“釣りざお”に(産経新聞)

 「ベトナムには『人を助けたいなら魚ではなく、魚を釣る釣りざおを渡しなさい』ということわざがある。今回の事業は、まさにこのことわざ通りだ」

 2月22日、ベトナムの首都ハノイ。市街中心部にあるベトナム北部最大の総合病院「バックマイ病院」の会議室で、グエン・クォク・アン院長は、笑顔でこう語った。

 「今回の事業で、先天性心疾患(生まれながらの心臓病)に苦しむベトナムの多くの子供が救われることを願っています」。アン院長に対し、国立国際医療研究センター(NCGM)の木村壮介院長もほほえみながら返答した。

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 明美ちゃん基金とNCGM、バックマイ病院はこの日、基金の適用が決まった「ベトナムへの先天性心疾患の医療技術指導」事業に関する覚書を交わした。

 事業の柱は2つ。ひとつは、日本から外科医、麻酔医、医療技師、看護師らで構成する医療団が年数回ベトナムへ渡航し、先天性心疾患の治療の技術指導を行う、というもの。

 もうひとつは、ベトナムから同様の医療団を日本に招き、大学病院や一般病院で研修を受け、高度な技術を学んでもらう、というものだ。研修先は、東京女子医大病院(東京都新宿区)や榊原記念病院(同府中市)が予定されている。

 長年にわたり国際医療協力に尽力してきたNCGMは、過去にも同病院に対して心臓病治療の技術指導を行ってきた経緯がある。

 日本の高度な医療技術をベトナムの医師に伝えることで、先天性心疾患に苦しむベトナムの多くの子供を救おう、というのが今回の事業の狙いだ。

 明美ちゃん基金は、読者の方々から寄せられた善意で、事業の支援を行っていくことになる。

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 「世界に100人の先天性心疾患の子供がいたら、このうち50人は何の治療も受けられず、40人は不十分な医療しか受けられない。必要な治療を受けられるのはわずか10人にすぎない」

 前東京女子医大心臓血管外科主任教授で、榊原サピアタワークリニック(東京都千代田区)の黒沢博身(ひろみ)院長は世界で先天性心疾患に苦しむ子供たちの状況をこう説明する。

 新生児の約1%が抱えているといわれる先天性心疾患。日本では毎年約1万人が生まれてくる計算だが、この子たちは必要な治療を受けられる「10人」の中でも、特に手厚い医療を受けられる状況にあるという。

 だが、ベトナムでは…。

 「世界の国々同様、ベトナムにも先天性心疾患に苦しむたくさんの子供がいる。しかし子供の手術ができる医療施設が、患者に比べて圧倒的に少ない」。こう話すのは、バックマイ病院の外科主任を務めるグエン・ホアン・ハー医師だ。

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 他の東南アジア諸国に比べ高い医療技術を持っているといわれるベトナム。だが、それでも小さな心臓にメスを入れるには、足りないものが多い。ハー医師は「日本ではごく簡単な先天性心疾患の手術でも、ベトナムでは1年以上待たされたうえ、間に合わず亡くなっていくケースも多い」と説明する。

 ある程度の技術はある。熱意もある。治療施設がまったくない絶望的な状況ではないものの、助けられるはずの子供に手が回らない。「目の前の魚を釣ることができない」。それが、今のベトナム医療の現状だという。

 逆に言えば、誰かが釣りざおさえ渡せばいい。今回の事業の目的、それはまさにベトナムに医療技術という“釣りざお”を手渡すことなのだ。(豊吉広英)

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